2018年12月14日金曜日

特定技能外国人という名の移民


先週土曜日(12/8)問題山積の「入国管理法改正案」が、参議院を通過してしまいました。予てより、たいへん気になってたこの法案。そこで法務省のホームページから、概要や原文のPDFをダウンロードして読んでみました。

法律関係の文章って、なぜこんなに悪文なんでしょうかね? わざと理解させないためか、解釈の幅を設けるために、敢えてそうしてるのか。国語の作文で提出したら、赤ペン先生で真っ赤っかにされそう。また、読みにくいだけでなく、どの分野に、どれぐらいの人数を、どれぐらいの期間、何を基準にして、受け入れるのかの記述がまったくない。

多くの記事や報道で指摘されている通り、「特定技能外国人」と名付けた労働者を海外から連れてくるため、新しい在留資格を設けると決めただけ。後は、公開審議不要で、恣意的に後付けできる内容としか思えません。これでは野党でなくても、ちょっと待ってぇなと言いたくなる。

現状を見てみると、2016年末現在、外国人技能実習生の名で、日本国内で就労する人が約23万人。ベトナム人と中国人が全体の7割を占めるなか、フィリピン人も1割以上。実に欺瞞に満ちた制度名称で、事実上の低賃金労働力の輸入に他ならない。

それでも、労使共に満足して、制度が円滑に運用されているなら、名称など気にならないけれど、以前から、セクハラ、パワハラ、過重労働など、劣悪な労働環境のために、逃亡や自殺、あるいは過労死が相次いでいるのが実態。さらに入国管理局の、非人道的とも言える、違法在留とされた外国人の扱いには、私も憤慨してました。

何より私が危惧するのは、法案のどこをどう読んでも、雇用側の視点ばかり。現実に、何年間か日本で暮らす人の側に立った記述が、見当たらないこと。まるで海外から部品購入時の規則みたい。

これで歯止めなしに外国人労働者を増やしたら、さらに悲惨な状況を作り出さないと、信じる方が無理というもの。

ベトナム人や中国人、あるいはフィリピン人の身になって、考えた人がいるんでしょうか。すでにフィリピンでさえ Karou-shi という日本語が聞かれるほど、日本での労働環境の悪さは、知れ渡っています。最初は、どっと人が集まっても、従来以上に国内外からの関心も高まっているので、もし不満が多かったり、最悪、死者が出れば、外交問題になりかねない。

つい最近も、中近東クウェートで働いていたフィリピン人家政婦が殺害され、死体が雇い主宅の冷蔵庫から見つかるという、残虐な事件が発覚したばかり。即刻ドゥテルテ大統領が同国への労働者派遣を停止し、帰国用の無料航空券1万人分を手配する事態となりました。

そこまで酷いことにならなくても、5年間で最大累計34万5千人を新たに入国(12/14付け新聞報道)させるとなると、中には日本人と恋愛関係になり、合法的に結婚して子供を作るケースも出てくるでしょう。そうなれば、日本人の配偶者として永住も含めたビザも申請できるし、生まれる子供は日本国籍が取得可能。どう考えたって、これは移民ですよ。

それとも恋愛も出産も禁じて、契約で縛り上げるか、タコ部屋のように、単独での外出を禁じて働かせるとでも言うのでしょうか。実際、中近東や東南アジア諸国では、外国人の就労に関して、同様の措置を取っているケースある。これでは国内で働くよりもマシと考える低所得層からの、単純労働作業者しか集まらない。

国家100年の計、とまでは言いませんが、ほんの数年先を見通しただけで、「これは移民には当たらない」と口先だけ繕った結果、どう解決するんだろうという問題が、すぐに思いついてしまいます。

誤解なきように申し述べておくと、私は移民に反対はしません。むしろ、移民の積極的受け入れ以外に、日本の繁栄はないとさえ考えています。ただ、こうした一時しのぎは、却って外国人・日本人の双方に反感を抱かせ、移民一切反対を声高に叫ぶ人たちを、勢いづかせるだけ。

最近たまたま目にしたインタビュー記事に、たいへん興味深いことが書いてありました。アメリカで起業するのは、移民や移民2世が多い。なぜなら失うものが少なくて、チャレンジすることを躊躇わないから。まさに、移民国家アメリカの活力の秘密が、集約された言葉。(その日は、すばらしい日。 ほぼ日刊イトイ新聞

自国民がやりたがらない、重労働や汚れ仕事を押し付けるのが、外国人労働者受け入れだと思っている為政者には、およそ考えつかないことでしょう。

上手くやれば日本が、同調圧力と行き過ぎた等質性の軛から脱して、再び高度経済成長時代の活気を取り戻せるかも知れない。まさに災い転じて福となす、千載一遇の好機。それとも、歴史に残る亡国への愚策となるか。この数年は目が離せない、重要な局面になることは間違いなさそうです。


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