2018年11月11日日曜日

言い方がちゃうだけやんけ


たいへん唐突ながら、「広島名物もみじ饅頭」と聞いて、すぐに漫才コンビB&Bが思い浮かぶ人は、若くても40代後半以上の方に違いありません。このネタが一世を風靡した1981年は、まさに漫才ブームの絶頂期。

のちに「オレたちひょうきん族」「笑っていいとも」などを世に送り出した、フジテレビのプロデューサー横澤彪さんが、「THE MANZAI」で火をつけた漫才ブーム。そのブームの中心的存在で、掛け合いではなく、もの凄い早口でほぼ1人喋り、もう1人は相槌を打つだけというスタイルで大人気になったのが、B&Bの島田洋七さん。(北野たけしさん、島田紳助さんは、それを真似たそうです。)

代表的なネタが、広島出身の洋七さんと、岡山生まれの相方、洋八さんが繰り広げる、広島vs岡山の自慢合戦。そこで出てきたのが、「広島名物もみじ饅頭」。対抗する「岡山名物マスカット」をしょぼくれた声とジェスチャー、もみじ饅頭は大げさなアクションと大声で言う洋七さんに、「そんなもん、言い方がちゃうだけやんけ」と洋八さんがツッ込むのが、お馴染みのパターン。

漫才を文章で説明しても、何が面白いのか全然分かりませんね。B&Bをリアルタイムで見ていなかった人は、ぜひユーチューブを開けて「もみじ饅頭」「B&B」で検索してみてください。

長いネタ振りで申し訳ありません。なぜ今頃「もみじ饅頭」を持ち出したかと言うと、今勉強中のイロンゴ語で、そういう語法があるんですよ。

冗談みたいですが、例えば Dugay dugay(ドゥガイ・ドゥガイ)という言葉。短くポン・ポンと切るように「ドゥガイ・ドゥガイ」と発音すると、「すぐ後で」という意味。ところが、ちょっとゆっくり「ドゥガイ・ドゥーガイ」と後半を引っ張って発音すると、真逆の「ゆっくり」になってしまいます。

これだけなく、Kuha kuha は、クハ・クハ「手に入れる」/クハ・クーハ「真似する」、Luto luto ルト・ルト「料理する」/ルト・ルート「熟し過ぎ」、Bata bata バタ・バタ「子供っぽい」/バタ・バータ「若すぎる」などなど。

日本語でも多少イントネーションを変えることで、微妙なニュアンスを表現したりはします。また同音異義語も多いけれど、漢字を書けば違いは明白。イロンゴ語の場合は、ニュアンスどころではなく別の意味になるのに、文字面はまったく同じ。それこそ「言い方がちゃうだけうやんけ」とツッ込んでしまいました。

家内によると、こういう語法は、公用語のタガログにはないようです。ひょっとしたら、セブアーノなど、他地方の方言にはあるかも知れません。

ここからは私の推測。最近でこそマザータング(母語)として、小学3年生までの正規教科になったイロンゴ語。ちゃんと教科書もあるけれど、それ以前はあまり印刷されることもなかったんじゃないか。公式文書は英語かフィリピノ語(タガログ)で事足りるし、スペルも人によって違ったりして、書き言葉としての整備が、あまり成されていない印象を受けます。

ということで、今日は想像もしないところで、イロンゴ語と漫才ネタが頭の中でリンクしてしまった、というお話でした。


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