2018年11月4日日曜日

自己責任で萎縮する日本


このところネット上の日本語環境では、「自己責任」という言葉で溢れかえっている印象です。これは言うまでもなく、日本人ジャーナリストの安田純平さんが、シリア内戦の取材中、武装勢力に拘束され、3年後の今年(2018年)10月に解放されたことに関連しての記事や書き込み。

この話、別に政府の役人でもなければ、企業の駐在員を命じられたわけでもなく、自分の都合と意思でフィリピン永住を選んだ私にとっては、とても他人事ではありません。

自己責任なんて、今更言われなくても骨身に沁みて分かってます。何年も働いて得た蓄えと退職金を、ほぼ全額フィリピンに移し、この国に生活の基盤を丸ごと持ってきてるんですから。なので、移住のリスクについては十分に考慮しました。

でも、いくら周到に準備したからと言っても、思いもかけない災害もあれば、戦火にまきこまれるかも知れない。最悪の場合、何もかも捨てて、日本に帰国という可能性もないわけではありません。だからと言って、仮に在マニラの日本大使館の職員が、「勝手にフィリピンに移住したんだから自己責任。帰国したいのなら、自分で航空券を買いなさい。」と突き放すのは、まったく筋が違う。

これを言い出したら、飲酒や喫煙の習慣があれば、健康保険を使った治療はダメだし、離婚が原因で貧困に陥った人には、生活保護を拒否してもいい、という理屈になってしまう。財務大臣が、不摂生した人のために税金を使うのは、おかしいとまで言い出す国ですからね。

さらに言うと、フィリピン人の恋人を追いかけてマニラに住み着き、財産を使い果たした困窮日本人でも、帰国の手助けぐらいは、日本政府の最低の義務だと思いますよ。だって、困っているのは日本人なんだから。納税者の理解が得られないって、現場の役人が判断するようなことではなく、これは原理原則。

助ける相手の、苦境に陥った理由によって態度を変えるなら、厳密な判断基準を示せと言いたくなる。フィリピン渡航の理由が仕事なら良くて、風俗通いだとダメなのか?ならば、個人で仕事はしてるけど、現地に愛人がいるような人は?

とにかく、今の行政は、税金を取る方は機械的にやるくせに、それを還元するとなった途端、恣意的な対応になることが多い。生活保護なんて、窓口であれこれ難癖つけるもんだから、本来受け取るべき人のうち、たった2割程度しか受給できていないそうです。

こういう事は、担当者に判断させるのが間違い。1パーセントにも満たない不正受給を恐れるより、まず困っている人を助けるのが先決で、こっちこそ変な手間をかけず機械的にやるべき。その点、不透明さも不公平もないベーシックインカム制を、トットと導入したらいいのにと思います。

私が危惧するのは、歪んだ「自己責任」がまかり通るようになると、海外に出ることを含めて、新しいことに挑戦する気持ちが萎縮してしまうこと。特に若い人たちが、目先の安定だけを求めて就職先を選ぶような風潮は、側から見ていてもヤバいなぁと思いますよ。


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