2016年12月12日月曜日
フィリピンメイド雇用の実際
前回の投稿では、早くフィリピンからメイドさんを呼んで、働く日本の主婦・主夫をもっと楽に...という趣旨のことを書いたところ、早速フェイスブックを通じて、何人かのフィリピン在住と思われる日本人の方から、反響をいただきました。
その中の意見として、フィリピン人のメイドを雇っても、仕事内容に不安や不満があって任せられない。結局たいへんでも、自分でやった方が気が楽との声が。確かに、日本人の家政婦さんとまったく同じレベルのサービスを期待したら、それは完全に裏切られるでしょうね。
こちらにはそんなつもりはなくても、フィリピンの感覚では、指示らしい指示もなく、隅々まで完璧を求められるように感じるでしょう。それに日比の経済格差を差し引いても給料が安い。ネグロス島だと、日本円で1万円も貰えばいい待遇。そんな低賃金で完璧を要求する方が無理筋というもの。
かれこれ3年間、メイドさんを雇用してきた私でも、さすがにフィリピン人メイドを、何の準備もなしにいきなり日本に連れて行って、お客さんに満足してもらえるとは思いません。「多少拙速でも早く」と書きましたが、当然ながらある程度の訓練は必須。では実際にメイドさんを受け入れるには、どんなことが必要になるか、ちょっと考えてみました。
まず最初の難関は日本語。こればかりは、最低でも家事で使う語彙と、雇用主と意思疎通ができる程度の会話能力がないと、それこそ話になりません。ただしここで、丁寧語も謙譲語も完璧に...とか言い出すと一気に「超狭き門」になってしまいます。大学の教授になって講義をするとか、神父さまの代わりにミサで説教をするわけではないので、最初は、家事限定の日本語で十分。その後、本人の努力で日本語能力が上がったら、サラリーをアップするようなインセンティブがあればいい。
家電製品の表記が全部漢字というのも、家事をするには問題でしょう。私は以前、家電製品のインターフェイス・デザインを担当していたので、よく分かりますが、漢字というのは、世界でも最も洗練された表意文字。短い表現でも実に理解しやすい。アルファベット圏のリモコンなどが、アイコンばかりなのとは対照的です。でも、家電の表記だけに限って学習すれば、それほどたいへんでもない。
フィリピン人の家内が来日した時、最初は洗濯機や掃除機、テレビのリモコンに、全部英語のラベルを貼ろうかと、真剣に悩みましたが、慣れてしまえばどうってことはありませんでした。とにかく何もせずに悩むより、やってみて改善していく姿勢があれば、恐れるには足りません。
それにも増して一番大事なのは、雇う側の意識の問題。「以心伝心」とか「一を聞いて十を知る」という言葉は、フィリピンでは通じません。そんなことを本気で言ったら、私は超能力者ではないと返されるのがオチ。どんなことでも、命じたことだけしかしないと思わないと危ない。場合によっては、紙に書いて渡すぐらいでないと。
我が家の歴代メイドさんの場合、調理の手伝いは、野菜を切るサイズも、ご飯を炊く量も、一回ごとに細かく指示しています。食材の買い物も全部メモ。八百屋さんもよく分かっていて、書いたメモに値段を書いてくれるので、お釣りの間違いや誤魔化しがない。日本の場合だとレシートをくれる場所の買い物がほとんどなので、これは大丈夫でしょうけど。
そんな感じなので、まずは単純な作業から始めるのが無難でしょう。それでも、食器洗いや洗濯物のたたみ、水回りの清掃などだけでも、やってもらえると本当に助かる。フィリピンでも料理はダメで、掃除・洗濯・食事の後片付けだけに特化したケースも多い。その分サラリーは、料理ができる人に比べると安い。
さらにフィリピンでは当たり前の住み込み。これは日本の住宅事情ではまず有り得ない。たとえ金額的には何とかなっても、雇い主が心の病気になりかねません。それに、雇用条件の交渉など、メイドを雇い慣れない日本人にはハードルが高い。やはりサービスを提供する会社などから、時間と作業内容を限定して、派遣する形式になるでしょうね。(これには、メイドさんをトラブルから守る意味もあります)
いずれにしても「金払うんだから、完璧にやってもらって当然」という態度では、受け入れは失敗します。それなりのサービスだけど、日本人を雇うよりもずっと安い、ぐらいに考えないといけません。そして、相手は感情のある人間だということも忘れずに。まぁそれは、どこの国でも、対人関係構築の基本ではありますが。
そんな、ちょっとした意識改革さえできれば、メイドさんのいる生活は、ずいぶん楽。私が50過ぎで「主夫」を始められたのも、メイドさんがいてくれてこそです。
次回に続きます。
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