2016年12月23日金曜日

普通の国への遠い道


約2か月ぶりに、ドゥテルテ大統領関連の投稿です。私がここで触れなくても、日本語のメディアでの露出がすごいですね。フィリピンのニュースとしては、稀に見る注目度で日本に報道され続けています。

最近は、日本訪問時の持ち上げぶりから比べると、トーンが少々様変わり。超法規的殺人が、すでに自首した人や、麻薬犯罪とは無関係な人にまで及んでいること、穏健派(大統領に比べると)のレニ・ロブレド副大統領との対立など、ネガティブな論調が目立つようになりました。

ここ数日では、ダバオ市長時代の自らの手による「処刑」を告白したり、大統領を殺人容疑で捜査することを求めた国連・人権高等弁務官を口汚く罵ったり。この演説は、昨夜のニュースで見ましたが、伏字の「ピー」ばかりで、よほどひどい言葉を連発してたんでしょうね。

日本にいて日本語の報道だけに接していると、なかなかフィリピン国内の雰囲気は分からない。私もフィリピンに住んでいるとはいえ、マニラ在住ではないので、首都圏の空気は皮膚感覚で理解しているわけではありません。しかし私の家内を始め、周囲のフィリピン人の意見を聞いている限り、相変わらずドゥテルテ大統領の支持率は高い。

そもそも、大統領本人が超法規的殺人に関与しているのは、公然の秘密。少なくともドゥテルテ大統領に投票したフィリピン国民は、今更それを認めたところで、誰も驚かない。冤罪が多いことに眉をひそめつつも「やむをえない」と考える人が多いように思います。対麻薬犯罪の「戦争」なので、誤射・誤爆による犠牲も、ある程度は仕方がないという感覚かも知れません。

それほどまでに、ドゥテルテ就任以前のフィリピンは、異常な状態が続いていました。言ってみれば、今この国は、ようやく「普通の国」になろうとしている。「普通」の定義とは何かと問われると、ちょっと困りますが、公務員や警官が公然と賄賂を求めたり、市長や裁判官が違法薬物ビジネスに手を染めたり、刑務所に拘留されている犯罪者が、外から娼婦を招き入れるのが当たり前の国は、とても普通とは言えないでしょう。ここまで普通でなくなった国を、一挙に普通にしようとすれば、強烈な反作用があるのは当然。

ドゥテルテ大統領の「暴言」も、本人の弁によると、思わず口が滑ったのではなく、意識的な発言とのこと。フィリピンのように、経済的にも軍事的にも弱い立場にある国からすれば、国際社会から注目されるには、これしか手がなかった。大国アメリカや中国と、良くも悪くも互角に渡り合う姿を見て、フィリピン国民ならずとも、溜飲を下げる人は多いようです。実際、ドゥテルテ大統領の派手な振る舞いがなければ、日本でフィリピンの麻薬汚染の惨状を知る人は、未だに少なかったでしょう。

暴言に比べると注目度は低いけれど、ドゥテルテ大統領就任以降、LTO(フィリピンの陸運局)の不手際で、3年間も滞っていた運転免許証発行が正常化したり、外国人へのビザ延長手続きの簡素化などが実現しています。地味な部分でも確実に変化が現れているのは、間違いない。

今年の前半には、まったく想像もできなかったフィリピンの現状。来年もドゥテルテ大統領の言動からは、目が離せません。


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