前フィリピン大統領の、ベニグノ・アキノ氏の時代。私たちの住むネグロス島の東西2州を、新しいリージョン(地方)にするという決定がありました。リージョン(Region)というのは、日本でいうと、近畿地方とか関東地方などと同様かも知れません。ただし日本の地方とは違い、単なる呼称ではなく、正式な行政区分。フィリピンには18のリージョンがあり、例えばマニラ首都圏は中央ルソン・リージョン。
以前にも投稿した通り、ネグロスは四国より少し小さい島。中央の山岳地帯が、地理的にも文化的にも、島の東西を二分。四国山地に隔てられて、瀬戸内の徳島・香川・愛媛と、太平洋側の高知が、いろんな意味でずいぶん異なっているのと似た感じです。
言語名から容易に推測できるように、イロンゴは西隣りのパナイ島の中心都市、イロイロが発祥の地で、セブアーノは言うまでもなく、東隣のセブの言葉。つまり、山越えが難しく、船での交流の方が容易で、それぞれ対岸の島々との関係が深かったことの名残り。そしてそれを反映するように、西側は西ビサヤ・リージョン、東側は中央ビサヤ・リージョンに所属。
今でも旅客鉄道も航空便もなく、西ネグロスの州都バコロドから、東のドマゲティまで車で5〜6時間の道程。それぞれに空港があるので、マニラやセブなら日帰り旅行ができます。こういう状況なので、「ネグロスアイランド・リージョン」ができても、誰が得をするのかよく分からない。
この発表があった一昨年(2015年)、家内は「どうせ選挙で議員が変わったら、どうなるか分からないよ」と冷笑的でした。さすがにこんな大事が、それほど簡単に覆らないだろうと思っておりましたが、驚いたことに覆ったんですよ。
先日ドゥテルテ大統領が、あっさりと「お金がないから、新リージョンは止める」と宣言。対麻薬戦争やらマラウイでの内戦など、重要案件が目白押しの政局で、ほとんど誰も関心を示さないまま、沙汰止みになってしまいました。こんなんでええんかいな。
ええ加減と言えば、ええ加減この上ない話。それでもよ〜く考えてみたら、金がないから止めると言えるのは、ひょっとすると至極マトモな政治判断ではないかと、思えてきました。原発を1機だけ作って、結局稼働させずに放置したりするフィリピン。これだって、無理に発電して事故を起こしていれば、どんな恐ろしいことになっていたか。
一度決めたことは、どれだけ周囲の状況が変わっても、頑固に変えない(変えられない)我が母国のお役所に比べると、よほど税金を大事に使っているとも言えます。例えば、本四連絡橋や整備新幹線。日本経済絶好調の時代に立案された計画なのに、景気が悪化しようが、飛行機の方が安くなろうが、頑迷なほどに見直しも修正もしない。
初志貫徹とか、朝令暮改を戒めるとか、日本の政治や経営では、最初に決めたことをやり抜くことばかり重要視。やってみてアカんかったら、止めるか、やり方を変えるというのは、ダメなことのように思う人が多い。それって、個人の生き方としても疲れるし、周囲も迷惑だと思うんですけどね。柔軟性がないのは、ちっとも自慢になりませんよ。
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