2020年2月21日金曜日

非常事態に炙り出される本性


ここ最近、幡野広志という人の書いた文章や語った言葉を、追いかけることにハマってます。改めて言うまでもなく、著作や人生相談で有名になった、本業が写真家の方。現在(2020年)37歳で、34歳の時に血液のガンであることが分かり、余命3年を宣告されたそうです。

こう書くと、不治の病を売り物にした、ヤバい作家かと思いきや、幡野さんの文章を少しでも読んだことがあれば、元来、人間に対しての鋭い観察眼、深い洞察力と、それを表現する能力に極めて高い能力を持った人が、たまたま病気になって注目されたと気付くでしょう。

その幡野さんの人生相談を一冊にまとめた「なんで僕に聞くんだろう。」を、数日前にキンドル版で購入。一気読みして、再読中にとても気になったのが、幡野さんと同様に治る見込みのないガン患者への一節。

「健康なときの人間関係が、病気になって色濃く炙りだされたようにぼくは感じます。」

つまり、妻がガンの余命宣告を受けた事実を受け入れられず、医師を取っ替え引っ替え、妻を引きずり回すような夫は、妻が健康だった時も、相手の気持ちを無視して、自分の考えを押し付けていた。

誰かが病気になった途端に、その家族が急に馬鹿になったり賢くなったりはしないわけで、それ以前の関係がより極端な形で炙り出されるということ。この考察はすごい。

そして私が思い至ったのは、この法則って、個人間だけでなく、人間の集団、さらには民族や国家の間でも似たようなものなんじゃないか、ということ。それが、今まさに世界中に広がっている新型コロナウイルスの感染にまつわる一連の大騒動。

「ガン」や「不治の病」を「非常事態」に置き換えれば、中国国外で、中国系・アジア系住民への差別や偏見が顕になったのも理解できます。新型コロナウイルスの発生源というのは引き金に過ぎず、元々、中国系、アジア系の人々に差別意識を持っていた人が、少なからずいて、それが一気に爆発した。

私の住むフィリピン・ネグロス島も例外ではありません。先日、英語学校に留学中の日本の学生さんと、近所のテニスコートに出かけた時のこと。先にプレイしていた地元の男性から、「君ら、中国人と違うやろな?」と、かなり厳しい詰問口調の英語で聞かれました。

また、フィリピン人の友人、知人も、中国人観光客を締め出すべきだと、いつになく感情的にSNSで発言したり。

中国から経済的な恩恵を受け、常日頃、中国で生産された製品を使っていても、中国という国へは、かなり屈折した思いがあるんだろうと思います。これは日本もまったく同様か、それ以上。

今回は中国でしたが、もし新しい感染症の発生源が日本だったりしたら、海外に住む日本人としては、想像するだけで恐ろしくなります。フィリピンでの対日感情は、表向きは概ね良好とは言え、日本人=金持ちというステレオタイプがあり、妬みや恨みの対象になりやすい。本音では、快く思ってない人だっているでしょう。

実際、ラジオ騒音の一件で、隣で作業中だった大工と揉めた時には、「この日本人が」みたいな言われ方もしました。非常事態に備えるという意味でも、やっぱりマイノリティは、下手に恨み買っちゃいけませんね。


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