2017年12月17日日曜日

フィリピン共和国「連邦」


もう半年前のことになりますが、今年(2017年)の7月、任期の2年目を迎える、フィリピンのドゥテルテ大統領による、施政方針演説が行われました。これは大統領に毎年義務付けられているもの。その2時間に渡るスピーチで取り上げられたトピックの一つに、連邦制導入があります。

それ以外には、対ドラッグ戦争の継続や、汚職撲滅、マニラ首都圏の渋滞緩和、リプロダクティブ・ヘルス(性・生殖に関する健康)の法整備など。しかし私には、他のすべてが枝葉末節に感じられるほど、連邦制は最重要案件。

フィリピンへの連邦制導入は、急に言い出したことではなく、選挙の公約としても掲げられていたし、ドゥテルテ氏の独創でもありません。正確な時期は分からないけれど、もうかなり以前からアイデアとしてはあった話。

日本でも、昔から度々政治家やマスコミが取り上げては消える道州制。基本はそれと同じことでしょう。日本の場合は、北海道・東北州・関東州・中部州・近畿州・中国州・四国州・九州・沖縄州などのブロックに分割し、中央省庁から各道州に、予算と権限を大幅に移譲するという構想。

これは東京からの遷都と並んで議論される、行きすぎた東京一局集中の是正と、地方の再生への根本的解決案。また震災被害などによる、日本全体の政治・経済へのダメージを最小限にすることにもつながります。

私がまだ新入社員だった1980年代、堺屋太一さんの遷都や道州制に関する本を読んで、大いに感化されました。通産省の官僚で、1970年の大阪万博のプロデュースを手掛けた堺屋さん。有名な著書「油断!」で、オイルショックを予言して話題になり、その後経済企画庁長官などのポストを歴任。

日本では、目立った進展もないまま現在に至る道州制。フィリピンでも似たような経緯のようです。メリットは誰にでも理解できる分かりやすい提案なのに、政治家や官僚の既得権益が失われるため、まったく議論が進まない。

ところが、ドゥテルテ大統領が言い出すと、まったく事情が違います。当選時に比べると陰りは見えたとはいえ、過去の大統領に比べれば、いまだに圧倒的な国民の支持を受けるドゥテルテ氏。対ドラッグ戦争では国内外からの批判を物ともしない。日本からの支援を受けてマニラ地下鉄プロジェクトは始動し、渋滞の一因とされるジプニー(乗り合いバス)の廃止を推進。中国との領土問題は棚上げ。マラウィでのイスラム系過激派との戦いでは、力づくで相手を押さえ込んでしまいました。

前政権までが、公約なんて忘れたかのような無為無策ぶりだったのに対し、効果がどこまで上がっているかの評価は分かれるにしても、少なくとも国民の目に見える具体施策を実行しています。連邦制についても、彼がここまで明言している以上、何らかのアクションを起こすことは間違いないし、当然水面下では手を打っていることでしょう。

実際に連邦制となったら、私たち家族の住むネグロス島はどうなるか。現在所属のリージョン(日本の関東や近畿などの地方に相当)がベースだと仮定するなら、ネグロス島の西半分と隣島パナイを含むリージョンⅣは、西ビサヤ共和国となるのかも。首都はイロイロ(パナイ島)かバコロド(ネグロス島)か。


そんな細かいことの心配より、まずは国民投票にまで持ち込めるかどうかが大問題。ドゥテルテ本人も選挙中の演説で「連邦制移行への準備ができれば、大統領の任期6年を待たずに辞任してもいい」と語ったほどの難事。素人で部外者の私でも、反対勢力との熾烈な戦いが待っているんだろうと容易に想像できます。

息子が社会人になる頃には、「フィリピン共和国連邦」が実現しているのでしょうか? ここ数年はフィリピンの政局から目が離せません。


0 件のコメント:

コメントを投稿