2020年10月14日水曜日

フィリピンの教師はつらいよ


フィリピンの 公立学校で、ようやく授業が再開したのが、先週の10月5日。これについて日本では、NHKを始め、いくつかの報道機関が短いニュースを発信しています。(フィリピンの公立学校オンラインで授業再開も6割が受けられず)「教育格差につながる恐れがある」と結んでいるのが、いかにも日本的。

まるでコロナ禍以前は、格差がなかったような書き方ですが、昔からはっきりとありますよ、フィリピンの教育格差。公立の学校は一律、授業料がタダでも、登校のためのわずか往復50円にも満たない、トライシクル(輪タク)代や、制服や教科書を買うお金がなかったりして、学校に行けない子供がいるのが、この国の現実。

もちろん、そういう子供達を救うために、それぞれの地方自治体で、僻地に教師を派遣して特別授業をしたり、制服・教科書の再利用を進めたりの努力はしていますが、日暮れて道遠しの感は否めない。また学校に通ってはいても、家計を助けるために、帰宅後は働いているとか、隣近所のカラオケの騒音で、宿題もできないなんていう、ハンディがあるケースも多い。

その上、オンライン授業を受けられるはずの、インターネットが使えて自宅にWiFiがある家庭でも問題はいっぱい。私たちが住むネグロス島など、調子がいい時で、下り速度の実測がせいぜい5Mbps。(快適にSNSに投稿したり、YouTubeを見るには最低5Mbpsが必要)

常時このスピードならばまだしも、時間帯によっては1Mbpsぐらいまで落ちるし、日本なら通信障害だとニュースになるような状況が、頻繁に起こる。追い討ちをかけるように、多発する停電。

実際のところ、オンライン授業で全生徒をカバーできるなんて、私の家内が勤務する、フィリピン教育省の現場スタッフも、最初から思っていません。完璧を期していたら、いつまで経っても何もできない。たとえ見切り発車でも、授業再開の決断をしたドゥテルテ大統領に、私は賛辞を送りたい。一部の日本人のように、ゼロリスクを求めて自縄自縛になるよりずっといい。

さて、こうした中で、学校教育の最前線にいる教師の方々。私のイロンゴ語の家庭教師アン嬢も、地元の私立高校で英語を教える先生の一人。私立では、一足先に8月の末から授業は再開済みで、この10月初旬に、再開後初めての定期テストでした。

先週はテストの準備や実施で超多忙だったそうで、イロンゴ語レッスンは1週間スキップ。実は今日、久しぶりにアンが来てくれて、レッスンの合間に、学校の実情について教えてもらいました。


本業が多忙でもレッスンを手抜きしないアン

それによると、オンライン授業は、想像以上にたいへん。自宅からパソコンで教える時など、隣りの犬が吠え出したり、行商の魚屋さんが来たりで、なかなか集中できないんだとか。笑ってしまったのは、私立校なので、生徒には裕福な家の子供が多く、それに比べて自分の部屋が見すぼらしくて恥ずかしいので、わざわざ背景用にピンクのカーテンを吊ったんだそうです。

そしてやっぱり愚痴ってたのが、ネット回線の不安定さと停電。

たいへんなのは、それだけではありません。オンライン授業だけでなく、自宅にインターネット環境がない生徒のために、プリントを配布して宿題形式で行う「モジュール授業」も同時進行。毎週、100部ものテキストを印刷してホッチキスで留めて、提出された内容をすべて添削。

以前に比べると、相当な作業量の増加なのに、給料は変わらず15,000ペソ(約32,000円)。ネグロス島の生活費は、私の感覚からすると、ざっと日本の1/5程度。つまり、日本ならば手取り16万円ぐらい。確かにこれは安過ぎますね。

なので、かなり真面目に転職を考えている様子のアン。先生を辞めて何をするのかと訊いたら、消防士になりたいそうです。給料がいいらしい。ただ、トレーニングにかかる費用が高いのが難点。それにしてもなぜ消防士なんでしょうか?



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