ただ、これによってカトリック全体が、同性愛行為を公式に認めたということではありません。神父によって同性カップルの婚姻を行うのではなく、甚だ微妙な表現ではありますが、「法的に保護される、婚姻に準ずる権利が必要」と述べているだけ。
実は、ローマ教皇がまだブエノスアイレスの大司教だった頃に、同性カップルの婚姻は認めないが、法的保護を与えるための「シビル・ユニオン法」を教会が推奨すべきとの立場だったとのこと。教皇になっても、その考えは変わっていないと表明したわけです。
シビル・ユニオンとは、1989年にデンマークから始まった、同性間カップルに対しても、異性間の結婚と同様の法的地位を付与する制度。現在、欧州諸国と、アメリカやカナダ、オーストラリアのいくつかの州、そして南米でも、名称や内容の差異はありつつも、この制度が実施されています。
ご存知の通り、日本ではまだ国の法整備までは至らないけれど、東京の渋谷区、世田谷区、兵庫県宝塚市などで、「男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備える関係」と定義したパートナーシップを、同性間カップルに認め、アパートへの入居や病院での面会を拒絶されないための条例を成立させています。
ところが、広く世界を見渡すと、法的制度どころか同性愛行為そのものが違法で、終身刑や死刑となる国もあります。
さて、私の住むフィリピン。多くのLGBTの人々が、その性的指向を公言して憚らないイメージがあって、シビル・ユニオンなどとっくに実現しているのかと勘違いしてましたが、全然そんなことはなくて、むしろ今回の教皇の発言で、カトリック関係者や政治家の間で騒ぎが起こっている。
この国では、明らかにLGBTと分かる服装や態度、言葉遣いであっても、それを理由に差別されることは、少なくとも私が知っている範囲では聞いたことがない。学校の先生や、オフィス勤務、スーパーのレジ係、セールスパーソンに至るまで、彼・彼女らは普通に仕事をしています。
とは言っても、カトリックが圧倒的大多数のフィリピン。やっぱり結婚や性にまつわる事柄に関しては、保守的なんですよ。実際のところ、いくらセックスワーカーや未成年の妊娠などが社会に溢れていようとも、メンタリティの核になるのはカトリック的道徳観。
そして教皇フランシスコの発言は、飽くまでもドキュメンタリー映画の中での個人の意見。バチカンの公式発表とはまったく意味合いが違います。ドゥテルテ大統領は、支持を表明しているそうですが、案の定、政治家や司祭は猛反発。「あきれて物が言えない」とする司教までいます。
ということで、私の見るところ、いくらパパさま(教皇)がそう仰っても、国の法律としてのシビル・ユニオンが、近いうちにフィリピンで実現する可能性は、とても低いでしょうね。
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