2018年7月7日土曜日

子供をセミリンガルにしたいですか?


日本人は英語が下手、苦手、嫌い...。
昔からずっと言われ続けて耳タコ。もう国民的なコンプレックスになってますね。おそらく戦争に負けて、占領したのがアメリカ軍で、その言葉が英語だった影響も大きいでしょう。

映画もドラマもハリウッド製の英語コンテンツが多いし、相手がアメリカやイギリスでなくても、海外でビジネスとなったら公用語は英語。読み書き・会話ができれば便利なのは間違いないし、何となくカッコ良さげに見える。

はるか昔に付き合っていた彼女(日本人)との初デートで、結構な高級レストランで食事したら、外国人ミュージシャンが音楽の生演奏。曲の合間に英語でちょっと話をしただけで、彼女が私を見る目が、キラキラの瞳に豹変。

当時私は、所属するメーカーの海外担当デザイナーで、英語のプレゼンテーションは必須。大人になってから訓練した英会話で、大したレベルでもなかったけれど、英語が全然ダメと思ってる人には、すごく流暢に聴こえたようです。

なるほど。異性にモテたいがために、英語を必死で勉強するのもアリかも。それも悪いとは言いません。要するに何のために外国語を学ぶのかが問題。

そして昨今の英語留学ブーム。ここネグロス島のバコロドやドゥマゲテにも、英語を習うためにたくさんの日本人が渡航。中学や高校の学生さんが休みを利用して来るだけでなく、お母さんが幼いお子さんを連れての母子留学もよく聞きます。

ただ、ここで慎重に考えないといけないのは、母語である日本語との兼ね合い。子供によってかなり個人差があるので、一括りにするのは危険ながら、息子を見ていて思うのは、やっぱり小学生になるぐらいまでは、しっかり日本語を頭に入れておかないと、母語として根付かない。

知らない漢字の意味や読み方を、自力で調べる能力が付く以前の段階で、日本を離れて、英語だけの学校に放り込むのは、子供の将来に深刻な影響を残しかねません。当然ながら言語を二つ習得するのは、その分の時間と労力が必要で、いくら吸収の早い子供であっても決して楽なことではない。

しかもまだ母語の基本すら身についていない幼児期に、複数の言葉を詰め込んだら、悪くするとセミリンガル(またはダブル・リミテッド)〜二つ以上の言葉を喋れても、どれも中途半端で、母語としての表現能力が身につかない〜になってしまう。

これは時折、帰国子女に見られる現象で、日本語でも外国語でも、幼稚な話し方しかできず、就ける職業が限られてしまう。私が実際に会社で会った帰国子女の女性は、そこまでひどくはなかったけれど、誰に対しても日本語がちょっとタメ口。流暢な英語を買われて、社内の英語スピーチコンテストに出場したら、言葉使いがビジネスに相応しくないと、予選で落とされてしまいました。

親も子も、移住先、例えばフィリピンに骨を埋める覚悟だと言うなら話は別。それなら、現地の子供向けの私学にでも入れて、英語もフィリピノ語も、きちんと習得させればいい。そのかわり子供の意識は、「日本にルーツがあるフィリピン人」となるでしょう。下手すると日本語が外国語化して、親との意思疎通も不自由になるかも知れません。

私の経験から言うと、外国語は後からでもいいから、まず母語能力の確立が先決。次は自分の専門領域を固めるのが筋というもの。英語を使って何をしたいのか、私の場合なら、海外のクライアントに向けての商品デザインをする目標があって、英語はその目標達成のための道具。ここを間違えると、英語ができるだけの器用貧乏にしかなりません。

親が漠然と「子供が英語を喋れたらカッコいい」なんて思いだけで、母語確立の機会を奪ったら、これはもう悲劇。繰り返しますが、外国語なんて必要になってから始めても大丈夫。二十歳過ぎてから英会話を泥縄で習って、外国で仕事して、国際結婚までした私が言うのだから、間違いありません。


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