2017年10月18日水曜日

物よりも知恵の支援を


国内では、あまり知られていないようですが、日本はフィリピンへのODA(政府開発援助 Official Development Assistance)でダントツのナンバー1。どれぐらいかというと、例えば今年(2017年)の1〜6月の支援額が、約5400億円なんだそうです。

2020年東京オリンピックでは、仮設会場の整備費用が当初見積もりの4倍近い、3000億円に膨れ上がったと騒いでいますが、それを上回る税金が、半年でフィリピに注ぎ込まれたことになります。

もちろんこれは融資。タダでお金を上げているわけではありません。しかし、金利は年0.1%の40年償還という条件。フィリピン・インサイドニュースの記事では、借り手のフィリピン政府からすると、この間の物価上昇を勘案すれば、実質的には儲けになっていると指摘されています。

日本のODAで建設されたものは、私が知っているだけでも、ここネグロス島シライ市のバコロド・シライ空港や、隣島パナイのイロイロ空港。ニノイ・アキノ・マニラ国際空港の第二ターミナル。セブとマクタンの海峡にかかる架橋など。最近では、このブログでも取り上げた、マニラの地下鉄プロジェクトも。

こうした気前の良さが、フィリピンでの対日感情に良い影響を与えているのは間違いない。フィリピン在留邦人もその恩恵に浴しているわけだし、先の大戦で日本がフィリピンに与えた被害の大きさを思えば、フィリピンに住んでいる私が、これを批判するべきではないでしょう。

とは言え、いくら政治的な思惑があっても、いささか常軌を逸した金額。まるで、タチの悪い商売女の色香に迷って、湯水のように金を貢ぐオっさんのようです。それなら、フィリピン女性と結婚して、その女性名義で土地を買い家を建てた私には、いよいよ批判する資格はないですが...。

金額もさることながら、JICAの作成した資料によると、ODAの内訳は、輸送インフラや水害対策など、物的支援にかなり偏っているのがわかります。4年前のヨランダ台風の被災時の緊急支援のようなケースでは、食料や医薬品、衣料が主体になるのは当然としても、ず〜っと箱物寄りというのは、いかがなものか。

民間でも、古着や中古自転車を、フィリピンの貧しい人たちに送り届けるといった活動があります。対費用効果を考えたら、現地で新品の服や自転車を購入した方が、はるかに効率的。それでもこの活動を通して、日本人にフィリピンの貧困の現実を知らしめるのが目的ということらしい。(日本でも貧困が問題になっているというのに)

それが無意味とは言いません。しかし、わずかな量の中古品ぐらいでは、砂漠にバケツで水まいているようなもの。同じお金を使うんだったら、他にやり方はいくらでもあると思いますよ。本当にそれを必要としている人に届くかどうかも不透明だし、受け取った子供の親が売っ払って、違法薬物購入のお金になってることも考えられる。悲しいことに、それがフィリピンの現実。

その点、昨年までの3年間、ここシライ市内で、日本のNPO法人 森は海の恋人 が行った活動には感心しました。簡単に言うと、環境問題を子供に教えるための、知識やスキルを持った教師の育成プログラム。まさしく物よりも知恵の支援。家内もセクレタリー兼通訳として参加しました。

地味で、遠回りな支援。森は海の恋人の日本人マネージャーも、即効性を求めるなら、日本企業を誘致して雇用を増やす方がいいとの意見。それでも長期の視点に立てば、教育に勝る支援は、ないのかも知れません。

物や食料を与えてもその場しのぎにしかならず、かえって依頼心を植え付けるだけ。助けになるどころか、悪い影響が出ることすらあります。川を渡れずに困っている人がいるなら、橋を作ってあげればいい。でも橋が壊れたり、老朽化したらどうする? 未来永劫ずっと助けることはできないのだから、川の渡り方を教えるのが、結局は一番いい方法だということでしょう。

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