2017年11月13日月曜日

婚約破棄


2015年の年明け早々のことだったので、もう丸3年近く前。家内がフィリピン大学の研究所に在籍していた当時の同僚で、今年(2017年)に還暦を迎えるフランチャスカ。その歳の離れた妹、シーラ嬢の婚約記念パーティがありました。場所は、ネグロスの隣島パナイの中心都市イロイロ。西ネグロスの州都バコロドと並んで、フィリピンで最も暮らしやすい街と言われています。

歳が離れたと言っても、もう30代の半ばは過ぎているシーラ。フィリピンにしてはかなり遅めの初婚。でも全然年齢を感じさせない、知的で清楚な雰囲気の美人で、お相手はアメリカ国籍の白人男性とのこと。

私たち夫婦はパーティに招待されて、珍しく息子を実家に預けての二人だけの一泊旅行。ちょっとしたハネムーン気分でした。それはともかく、会場はかなり広い宅地内の多目的広場。一部に屋根があって、パーティができるようなスペース。

そこに親戚や友人など、20〜30名ほどが集まって、フィリピンにしては比較的こじんまりした雰囲気のパーティ。それでも豚の丸焼きレッチョンを始めとして、本格的なケータリングによる豪華な食事が用意され、味も量も申し分なし。

ちょっと気になったのは、シーラは終始笑顔で幸せそうだったけれど、未来の旦那さんは、何となく場に馴染んでいなくて、戸惑ったような表情だったこと。これは私も経験があって、故国を離れてこういうパーティをすると、自分の家族や友達は誰もいなくて、相手の関係者ばかり。どうしても会話も途切れがちになり、やや浮いてしまうのは、ある程度仕方がない。

そして数日前。家内と朝ごはんを食べている時、来月予定のフランチェスカの還暦祝いの話題になりました。私が何気なく「ところでシーラは、いつになったら結婚するの。ひょとしてもう別れちゃった?」と冗談のつもりで尋ねたら、家内が突然真顔に。

冗談じゃなかったんですよ。詳しい経緯は分かりませんが、婚約破棄しちゃったそうです。それも、家内以外にはまだ誰にも打ち明けていなくて、フランチャスカのお祝いの席では、絶対に言っちゃだめだと、口止めされてしまいました。

家内はシーラのゴッドマザー(名付け親)にして、一番信頼されている姉貴分みたいな存在。シーラが学生だった頃には、ラブレターの代筆したり。そう言えば、去年だったか、シーラが一人で我が家に泊まりに来たこともありましたね。家族にも言えないことでも打ち明けられるのが、20歳も歳上の他人だというのも不思議な感じ。

それにしても、今回は残念な結果になりましたが、フィリピンでこんなにフォーマルな婚約発表というのは、私は初めて聞きました。婚約どころか、親が相手の顔を見る前に妊娠したとか、その後も家族が結婚を認めないので、そのままシングルマザーになった、みたいな話は多い。貧困層だと、子供もたくさんいて、どう見ても夫婦なのに、届け出の費用がないから放置している、なんていうカップルさえいます。

ただ、どういう形で一緒に住んでも、また、親になっても、日本のような生き辛さはあまりないように思います。母親が孤立して、一人で子供の面倒を見るというケースは少ないんじゃないでしょうか。特に、親戚縁者が地域に固まって暮らすことが一般的な、田舎のネグロス。子供の親じゃなくても、大抵誰かが協力して子育てをしているようです。周囲の大人も、両親と同居していない子供を、白眼視したり特別扱いしたりという話は聞かないですね。

シーラの場合は、シングルマザーになったわけでもないし、婚約破棄を知っても、家族や親戚は、温かく見守るという気がします。まあ、経済的にも精神的にも独立した大人の女性なので、本人のプライドの問題だけかも知れません。ということで、部外者の私が言うのも変ですが、シーラの傷心が癒えることを祈りつつ、しばらくは事態を静観したいと思います。


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