2014年11月7日金曜日

ブレッドウィナーの涙

私がフィリピン通いをするようになってから覚えた英単語に、ブレッドウィナー(Bread Winner)という言葉があります。辞書を引くと「稼ぎ人」と出てきますが、実際に使われてる感じで言うと「一家の大黒柱」の方がぴったりくると思います。

日本だと夫婦共働きはもう当たり前ですね。たった一人の収入だけでは家計を支えきれないという理由も大きいでしょう。フィリピンでも事情は同じと言うか、もっと厳しい。

例えば義弟の家族の場合、義弟は市役所で部署の次長レベル。日本で同じ役職ならば、家族5人ぐらいは、そう無理なく養えると思います。しかしこちらでは、奥さん(義妹)が小学校の先生をして、同居する義父が年金をもらっていても、中流の生活を維持するのがカツカツなようです。

住んでいる土地と家は、親の代に購入したものなので、ローンはないとしても、40歳をだいぶ過ぎてからようやくコンパクトな新車を購入した以外、目立った贅沢はしていません。実に慎ましく暮らしている感じ。

これが貧困層になると困窮度は一気に上がって、まず収入が安定した職に就くこと自体がかなり難しい。フィリピンでも就職時には学歴の有無が重要なので、貧困ループにはまってしまうと何世代も抜け出せなくなってしまう。

こういう家族で、そこそこの稼ぎをする人がいると、親兄弟が何人もその一人に依存するケースがとても多い。典型的なパターンは、海外への出稼ぎか水商売。これがフィリピンで言われる「ブレッドウィナー」ですね。

20年前、家内と出会う前に付き合ったいたフィリピン人の彼女が、絵に描いたようなブレッドウィナー。お父さんはドバイに出稼ぎに行ったまま行方不明、本人はホステスをしながら家族を養い、兄弟の学費まで面倒を見て、さらにシングルマザーで幼い娘もいる。誰か助けたれよ〜という状況。こういう話は、本当によく聞きました。

八月にセブ島でのスラムホームステイをした時に知り合って、フェイスブックの友達になったフィリピン人の女性がいます。彼女から数日前にメッセージがありました。
「私の家族は、あなたのような良いクリスマスが迎えられません。私たちにも、もっとたくさん、神さまの祝福がほしい。」

どうやら、このブログでも紹介したクリスマス用の電飾の写真を見たらしい。別に見せびらかしたつもりはないのですが、ちょうど勤め先を解雇されたそうで、しかもたくさんの家族を一人で養っている立場だったので、こういう愚痴が出たんでしょうね。

つらいけれど助けてあげることはできないし、何か言葉を返しても白々しいだけ。本や記事だけでの知識ではなく、実際に顔を知っていて話をしたことがある人から、こういう弱音を聞かされると、心を揺さぶられる思いがします。
一体何年経ったら、フィリピンの貧困問題は解消されるのでしょうか? ただの外国人に過ぎない私には、荷の重い問いかけです。


機窓から見たセブ島の夕暮れ


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