2018年2月16日金曜日

すぐやる大統領


出典:philstar

1969年(昭和44年)、千葉県松戸市の市役所に「すぐやる課」が創設されました。横連携がなく、責任逃ればかりで、なかなか物事が前に進まないのが「お役所仕事」。そんな旧弊を変えようと、ドラッグストアで有名なマツモトキヨシこと、当時の松戸市長の松本清氏が考案した、市長直轄の部署。

「すぐやらなければならないもので、すぐやり得るものは、すぐにやります」をモットーに、当初は課員2名でスタート。これは当時、テレビや新聞で大きく取り上げられ、小学生だった私に、「すぐやる課っちゅうのができたんやて〜」と、さも面白そうに母が教えてくれました。

その話題性と効用から、国内の300以上もの自治体で、同様の部署が立ち上げ。その後、縦割り構造の改善が進んだとして、廃止されるケースもありましたが、元祖である松戸市では今も健在。スズメバチの巣の撤去など、年間1000件以上を処理しているそうです。

唐突にすぐやる課の話を持ち出したのは、他でもない、我らが大統領ドゥテルテさんのこと。この人の就任以来の業績を見ていると、「すぐやる課」ならぬ、「すぐやる大統領」と呼びたくなる。

最近の事例では、中東クウェートで、同胞の海外出稼ぎ労働者が虐待を受けているとなったら、あっと言うまに渡航禁止を言い渡し、帰国用のチャーター便を無償手配。フィリピンに戻ったって仕事はないだろう、なんて訳知り顔連中の戯言には耳も貸さず、まずはフィリピン人の命を守ること最優先で、電光石火の早業。

つい先日も、観光地で有名なボラカイ島で、海の汚染が目に余るとして、半年以内に状況が改善されなければ、島を閉鎖すると宣言。こういうのは聞いていて惚れ々れしますね。

麻薬戦争は言うに及ばず、ジプニーの近代化地下鉄建設、警官の給与アップに、事故が相次いだ年末年始の花火・爆竹対策禁煙の徹底、フィリピン航空の空港ターミナル使用料未払い問題の解決...。私が知っているだけでも、ざっとこれぐらいは、すぐに出てきます。

どれもこれも、何年も、あるいは何十年も、何とかしないといけないと叫ばれていた事案ばかり。歴代大統領が、「やるやる詐欺」を繰り返していたことを思えば、同じ国の同じ政府とは思えない変わり方。

こう書くと、日本でもドゥテルテさんみたいな指導者が現れないものか、と溜息混じりの声が聞こえてきます。それも分からなくはないけれど、大統領一人に相当な権力が集中している、フィリピンの政治体制なればこその側面もあります。そもそも、日本の現政権に同じ権限を持たせれば、間違った方向に変革が進みそうで怖い。(今でも相当ヤバいのに)

また、こうした流れは、ドゥテルテさん個人の能力だけというより、フィリピン国民が渇望していたリーダー像に、彼がぴったり当てはまったから。シンガポールやマレーシアに遅れること30年以上。いまやインドネシアにすら追い越されてしまったフィリピン人からすれば、少々やり方が荒っぽくても、本当にやるべきことをやってくれる政治家を、歓迎する雰囲気が醸成されていたと見るべきでしょう。

とは言え、一部で多少改善の気配が見えても、全体で見れば相変わらずの、「すぐやる課」とは程遠い、お役所仕事のフィリピン省庁とその下部組織。ドゥテルテさんが任期満了の頃には、どれぐらいマシになっているでしょう。期待しすぎずに、その動向を見守りたいと思います。


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