2018年8月18日土曜日

女性の自立を阻む国


昔ほどではないけれど、今でも「男は仕事あってこそ」みたいな言い方をする人がいます。もちろん、やり甲斐のある職業に就いて、充実した毎日を送っている人は、いいなぁと思うし、健康でずっとその仕事を続けられたら、たいへん幸せな人生でしょう。それは、男に限ったことではないですけどね。

ただ、男女雇用機会均等法が施行されてからだけで、もう30年以上経過した日本で、未だに女性が、十分な報酬を得られなかったり、相応の地位につけなかったり。さすがに公然と「女が働くなんて生意気な」とは言えないにしろ、そんな感情を剥き出しにするオっさんは多い。その手の輩に「男は仕事...云々」みたいなことを言われると、つい反発したくなります。

女性を雇いたくない理由として、よく言われるのは、結婚や出産を機に退職してしまうとか、家事や育児のために長時間労働ができないとか。これって今となっては、女性だけなく、男性の働き手をも束縛して苦しめている、呪いみたいなもの。

一度正社員になったら、簡単に辞められないと、雇われる側も思い込んでいるから、いくら仕事がキツくても、人間関係に行き詰っても、ひたすら耐えるしか選択肢がない。また、単に無駄な仕事が多いだけなのに、いつまで経っても根本的な解決を図ろうとしない。

普通に考えたら、女性だから務まらないんじゃなくて、そもそも、よっぽど我慢強くて、盲目的に働くことを厭わない人以外は、耐えられないような労働環境だと認めているようなもの。

それでも、1960〜70年代やバブル期のように、年々収入が増えて豊かになっていく実感があれば、それでも頑張ろうかというのも分かりますが、いくら真面目に働いても、結婚や子供を持つこともままならない給料の安さ。

もう社会の状況が40年前、30年前とは様変わりしているのに、女性のポジションだけは昔のままにしておきたいらしい。むしろ優秀な人材の輩出を、女性だというだけで、全力で妨害している。最近発覚した、東京医科大の入試における不正は、氷山の一角。

出来る女を落として、本来なら合格できないレベルの男を医者にするって、恐ろしい話ですよ。医療だけでなく、フェアな競争ができていれば、他の分野でも、日本はもっと国際競争力が付いていたんじゃないかと思います。

さらに恐ろしいのは、母子家庭の半数以上が、相対的貧困に陥っている事実。(2016年、厚生労働省の調査)これは長年、女性の経済的自立を阻み続けてきた結果に、他ならないでしょう。

日本から離れて、フィリピンの田舎暮らしをしていても感じるのは、最近の日本では女性の方が行動力も知的好奇心も、男性より上なんじゃないかということ。

我が家に来てくれる、ボランティアや英語留学の若い日本人は、8〜9割が女性。学校を卒業してからも、中には、日本の閉塞感を嫌って、フィリピンにそのまま居ついたり、自分で仕事を立ち上げたり。私の知る限り、どの人もちゃんと自立して、実に活き活きと暮らしてますよ。

その点男は、若い世代でも、日本の会社に就職して、きちんと月々のサラリーを貰って...みたいな、昔ながらのレールの上を走ることしか考えない人が多い。海外に出るのは、最低でも3年、日本で働いてからじゃないと、なんて、まったく意味不明の、年上の誰かに吹き込まれたようなセリフを言ったり。

翻ってフィリピン社会。家内の親戚や友達関係を通じて知り合った、フィリピン大学の教授、大きなビジネスに携わる貿易商、食品加工会社の経営者など、そのすべてが女性。他にも実際に話したことのある人では、フィルヘルス(フィリピンの健康保険会社)の部長職やメトロバンク(大手銀行)の支店長など、高い地位にある女性は、何人でも思い浮かべることができます。

もっと言うと、この国では、女性の社会進出を阻んだら、国の運営そのものが立ち行かない。すでに二人の女性大統領が誕生し、現副大統領も女性。役所でも民間のオフィスでも、管理職に女性がいない場所を探す方が難しい。

こう書いている私にしても、教育省の出先機関に勤務する家内を、サポートする側になっての専業主夫。フィリピンでは誰一人として、それを訝しんだりはしません。

女性がつらい思いをする国では、男性も幸せになれない。ネグロスに移住して6年目の今年、その思いを年々強くする次第です。


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