2018年6月25日月曜日

無理ならさっさと辞めなさい


先日の、新しく雇った19歳のメイドさんが、たったの四日で、家族が恋しいと辞めてしまったお話。いろんな方から「残念だ」「がんばれ」などの反響をいただきました。フィリピン在住の人に、同様の経験談も聞かせてもらったり。

ただ一つだけ引っかかったのが、「覚悟が足りない」という意見。別段深い意味があったのではなく、思ったことをそのまま書いただけでしょう。でも考えてみると、さらっとこんな言葉が出てくる辺り、日本とフィリピンの間にある、埋めがたい労働に対する考え方の差を感じてしまいました。

まず、今回のメイドさんの給料。日本の感覚だと驚くべき安さの、月3500ペソ(約8000円)。我が家の住み込みならば、個室があって、お湯のシャワーもトイレも使えるし、食費・光熱費無料。でもその条件を考慮しても、決して高い金額ではありません。下手すると、コンビニのバイトの方が実入りがいいかも知れないほど(通常半年で解雇ですが)。

これは私が特別にケチなわけではなく、ここネグロス島での相場。料理の腕がいい、看護の資格がある、などのアドバンテージがなければ、この程度。そんな安月給の仕事に就くからと、「覚悟 Preparedness」なんて重たい言葉を持ち出したら、当のメイドさんが驚いてしまいそう。

どうも日本人は、一度始めた仕事は、辛くても我慢して続けるものだと考える人が圧倒的に多い。「石の上にも三年」って、今でも時々聞く言葉。しかし、私が知る限り、フィリピンでもその他の国でも、同じ場所で長く働き続けたからと言って、それだけで賞賛されることはない。

転職してステップアップするのは当たり前だし、考えていた職場と違うと感じたらすぐに退職。反対に、仕事が自分に合っていなかったり、人間関係が悪いのに、我慢して頑張るなんて、ちょっと頭がおかしいと思われるかも。

確かに雇う側にすれば、せめて半年やそこらは働いてほしかったと思う反面、嫌な仕事を無理してまで続けてもらう気はありません。特に住み込みメイドの場合、朝から晩まで同じ家にいるので、機嫌よく挨拶のひとつもしてくれなければ、こっちが負担に感じてしまいます。

最近、日本から来てくれた学生さんが、私に就職活動のことを話してくれることが何度かありました。そんな時の私のアドバイス。会社なんて結局入ってみないと、良し悪しや合う合わないは分からない。なので、無理だと思ったら、さっさと辞めた方がいい。

仕事の本質は、自分の生活を成り立たせるための収入源。仕事のために精神を病んだり、家族を犠牲にするなんて、本末転倒もいいところ。そもそも私が就職した30年前とは、状況はまったく変わっている。インターネットとそれなりのアイデアさえあれば、いくらでも起業できる時代。

なのに相変わらず、大学の新卒でなければ採用しない、恐ろしく旧態依然とした雇用システムを墨守する会社のなんと多いことか。雇われる方も、一旦「正社員」になったら、どんなに理不尽な業務でも、過労死のリスクを抱えてでもしがみつく。何なんでしょうね、このメンタリティは。

そう考えれば、やってみたけど思ったほど良い仕事でもなかったから、四日で辞めちゃった、というフィリピン人の方が、ずっと合理的に見えてくる。

この背景には、正規雇用してしまうと簡単には辞めさせられないという、日本の特殊事情があります。何年も働くことが当然としているので、それこそ生涯の伴侶を選ぶみたいな大事になりがち。

本当は、ちょっと付き合う彼氏、彼女を探す程度の軽いノリでいいはずなんですよ。一緒に住んでみてダメなら、すぐに別れた方がお互いのためというもの。出会った時から「結婚を前提に」なんて言われたら、これはちょっと重すぎる。

フィリピンのように、昇給させたくないからと、半年でクビにされては堪りませんが、もう少し、解雇も再就職も楽にできる法律なり制度を考えた方が、現実に即しているんじゃないかと思いますね。



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