2018年6月8日金曜日

死者の誕生日を祝う夜


こんなタイトルを付けると、ホラーかオカルトと思われそう。フィリピンでは、亡くなった人の誕生日を祝うのは、珍しいことではありません。昨夜は、親戚一同と友人が集い、昨年(2017年)6月1日に亡くなった、家内の叔父の誕生日パーティに出席しました。

愛称ダディ・バートこと、ロベルト・バトーさんは、享年71歳。肝臓癌のため、ネグロス島バコロド市内の病院にて帰天しました。その直後に迎えた72歳の誕生日は、1週間続くお通夜の会場で、身内だけでケーキを用意して行ったとのこと。なんだか、フィリピン人のバースディに寄せる執念を感じてしまいます。

そして昨日、亡くなってから2回目の誕生日は、服喪明けも兼ねて盛大なパーティ。生きている人のお祝いと何も変わらず、中華レストランの2階を借り切って、レッチョン・バボイ(豚の丸焼き)2頭分に、たくさんの料理を準備。未亡人のテレシタ・バトーさんが夫に代わって、バースディケーキに立てたロウソクを吹き消しました。



ちゃんとハッピー・バースディはみんなで合唱するし、陽気な音楽は流れ、涙する人もいません。ただ、さすがに大笑いは少なくて、フィリピン人の集まりにしては、ややしんみりした感じ。

12年前に亡くなった義母の場合、命日だけでなく誕生日にもお墓の前に集まって、ハッピーバースデーを歌ったりしますが、死者のための本格的なパーティに出たのは、私にとっては初めての経験。もちろん、毎年ずっと亡くなった人の誕生日を祝い続けるわけではなく、最初の1年目だけ。

今回は、やや早いとは言っても、故人は孫もいる71歳の老人。悲しみの中にも、順当に送り出したという一抹の安堵感はあります。これが、もし亡くなったのが成人前の子供だったりしたら、いくら1年経っていても、誕生日のパーティなんてつら過ぎる。でも家内に訊いたら、年齢に関係なくお祝いをするんだそうです。一種の「区切り」みたいなものなんでしょうか。

私がフィリピンと関わりを持ってから、かれこれ20年以上で、移住してから5年。もう大抵の習慣や風習は理解したつもりでしたが、遺影を前にして「おめでとう」を言うのは、やっぱり相当な違和感ですね。



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