2018年1月1日月曜日

ティティボ・ティボ 愛らしきフィリピンポップス


皆さま、明けましておめでとうございます。と、言いつつこの投稿は、日付が変わると同時にアップしようと、大晦日の夕方に書いております。

フィリピンでもお正月の1日は、クリスマス並みにお祝いします。家内の親戚の場合は、クリスマスイブは本当に家族だけ。正月に叔父叔母・従兄弟姉妹・友達などが集まる。人数だけで言うと、こっちの方が盛大かも知れません。爆竹や花火もネグロス島のシライでは、どちらかと言うとクリスマス前後はまだ序の口で、一番騒がしいのはやはり大晦日の深夜。

さて、2018年最初の話題は、年末に日本人の友達から教えてもらった、今フィリピンのティーンエイジャーを中心に流行っているというポップソングについて。

フィリピンの流行歌というと、歌唱力ガンガンのセクシーなお姉ちゃんが、全力で歌い上げるか、イントロを聴くだけで踊りだしたくなる、ディスコ向けのイメージ。分かりやすいけど、あんまり続けて聴くと疲れてしまうことも。

そんな私の思い込みに反して、実はいろんなタイプの曲があるんですね。考えてみれば、タガログ語のポップソングだけではなく、私と同世代のフィリピン人なら、ビートルズもクィーンもよく知ってます。家内など、スティングのファン。ネットでいくらでも楽曲をダウンロードできる昨今、日本や韓国の最新ヒット曲を、若い人が口ずさんでいたりして驚くことも。

そんな背景もあってか、典型的なタガログポップスとは、ずいぶんと趣が異なるこの曲。タイトルが、ティティボ・ティボ(Titibo TIbo)。「おなべさん」を意味するタガログ語。つまり「おかまさん」の対語であるところの、女性の同性愛者。最近日本でもホモやレズじゃなくてLGBT、もしくは性的少数者という呼称を使うのが一般的になりました。

フィリピンではLGBTに対して、取り立てて拒絶反応があるわけではなく、神経質になることもない。お店やレストランの従業員で、見るからにそれ風の外見や態度でも、誰も気にしない。まぁ、そういう人もいるでしょう、ぐらいの感覚です。

ただし、家族や親戚でも、まったく問題ないかというと、必ずしもそうではないらしく、性的な嗜好は仕方ないけど、人前で男の女装・女の男装には反対する人もいます。私が実際に見聞きしたケースで、家内の叔母が、同居するLGBTの甥に苦言を呈したために、喧嘩して別居ということもありました。(現在は和解)

ということで、日本だと、まだまだ微妙でデリケートな話になりそうなことを、さらりと歌ってしまうのは、ちょっと驚き。これがまた、モイラ・デラ・トーレ(Moira Dela Torre)という、キュートな女性シンガーが、シンプルなアレンジで、ちょっと舌足らずに歌っています。最初はタガログじゃなくて、フランスのポップソングかと思いました。それでは、聴いてみてください。


タガログが分からない人のために、家内の監修で和訳してみました。


小学校ではみんな気づいてた
ちっとも女の子らしくない私のこと
ゴム跳びもぜずに、カード遊びやビー玉
一緒に遊ぶのは、
けんか自慢の男の子たちばかり

高校で友達になったのは、
ちょっとレズっぽい彼女
化粧道具の代わりに、
いつもギターを持ち歩いてた
身なりと言えば、
長袖Tシャツにくたびれたジーンズばかり

そんな私が変わったのは、
あなたと出会ってから
髪の結び方を教わって、
月に一度は眉のお手入れ
どうしてなの
私はあなたにすっかりお手上げ
私は野生のトラなのに、
男の子に捕まっちゃうなんて

もしも私がトンボイでも
私のハートはあなたに夢中
たった一度のキスでドキドキ

まるで花が咲くように、
私は乙女になりました
だってあなたの愛は、水と太陽
私を照らしてくれるから

大学生になってから
あなたは私を10ヶ月も口説き続け
チョコレートやありきたりな贈り物じゃなくて
私のハートを射止めたのは
あなたのポエムと可愛い歌
私の返事は甘い”イエス”

あなたは最初の出会いから、
奇跡の起こし方を知っていた
ハイヒールの履き方を教わって、
赤いドレスも着るように
熱いコーヒーのようなあなたの愛があれば
どんなパンでも柔らかくなるもの
私がそんな風に変わるなんて
あなたは思いもしなかったけれど


我ながら、訳詞のセンスがないですね。どうもすみません。直訳では情緒もヘッタクレもないので、センスがないなりに頑張って意訳をしました。YouTubeのムービーにはオリジナルの歌詞が付いているので、言葉が分かる方は、誤訳を指摘いただけると幸いです。

「ティティボ・ティボ」を英語のトンボイ(Tomboy)としたのは、日本語で「おなべ」としてしまうと、あまりに曲の印象と離れてしまい、フィリピンで一般的に女性の同性愛者を指す言葉のトンボイの方が、ふさわしいと思ったからです。ちなみに英語では、元々の意味は、お転婆娘のこと。

正面から同性愛のことを歌ったのではないけれど、小学校や高校でもLGBTが、それほど珍しい存在ではないことを伺わせます。このモチーフを可愛らしい初恋の歌に仕上げて、それをヒットさせてしまうのは、さすがフィリピン、と言うべきでしょう。


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