2018年1月14日日曜日
虐待の犠牲となったフィリピン女性のために
昨年(2017年)12月8日、日本がハワイ真珠湾を奇襲攻撃して太平洋戦争が始まってから、ちょうど76年目のその日、マニラ市内で、ある像の除幕式が行われました。フィリピンの民族衣装を身にまとい、目隠しをされた女性。両手は胸の前で固く握られ、何かを訴えるような口元。
これが「フィリピン初の慰安婦像」として、日本でも報じられたものです。しかし、少なくとも像の台座に記された、フィリピノ(タガログ)語碑文を読む限り、「慰安婦」や「性奴隷」などの文言はありません。
Ang bantayog na ito ay alaala sa mga pilipinang naging biktima ng pang-aabuso sa pilipinas noong panahon ng pananakop ng Hapon (1942-1945). Mahabang panahon ang lumipas bago sila tumestigo at nagbigay pahayag hinggil sa kanilang naranasan.
この記念碑は、1942〜1945の日本の占領下で、虐待の犠牲となったフィリピン女性の記憶のためのものである。彼女らが、その体験を証言し話すまでには、長い時間を要した。
日本のマスコミは、最初から「慰安婦像」と決めつける記事ばかりで、その場所も、わざわざ在マニラ日本大使館がすぐ近くという表現までして、韓国のソウルに設置された慰安婦像と同列のものだという印象を、読者に与えようという意図が見え隠れ。
案の定ネットでは、多額の援助を受けながら、日本を貶めるような像を作るとは許せん、とばかりに、瞬間湯沸し器のように熱くなった罵声が満ち溢れる結果に。確かに、中国系の団体の寄付によって建てられてものなので、裏の意味があるのは当然。でもなぜ、このタイミングだったのかを、少しは考えてほしい。
日本からの円借款による、マニラの地下鉄建設決定が象徴するように、今のフィリピンと日本は、政治的に極めて良好な関係。それと競うように、日比の間に割り込んででも、自国の影響力を拡大したい中国。
ここで日本とフィリピンが対立すれば、誰が得をするでしょう。つまり、この像を政治問題にして、フィリピン叩きを始めれば、まんまと狙いにハマるようなもの。日本の官房長官や来比中の総務大臣の発言は、あまり賢明だとは思えない。
それだけならば、戦争犠牲者のためとしか見えない記念碑に、日本政府が圧力をかけて撤去させたとなると、フィリピン国内の人権団体や、諸外国からどう見えるか。過去の犯罪行為を揉み消すために、援助国の立場を悪用したと批判されるのがオチ。その意味で、ドゥテルテ大統領が、マニラ市の管轄であって、フィリピン政府としての底意はないとしたのは、正しい対応。
これは感情的になったほうが負け。直接的に像の建立に動いた中国系フィリピン人たちにしても、日本憎しというような子供っぽい動機ではなく、中国からの資金が流れ込めば、何かと利益が見込めるからでしょう。だいたい、あそこまで立派なものを秘密裡に作るとすれば、相当な金と手間がかかったはず。
そして私の知る限り、現地でのテレビ報道や、身近にいるフィリピン人の間で、この件にそれほどの注目が集まっているとは思えない。太平洋戦争時の日本兵による残虐行為は、戦後生まれでも、まともに教育を受けた人なら誰でも知ってるし、慰安婦の存在も周知の事実。今さら像が建ったからと、日本人の評判が落ちたり、態度が変わるものでもありません。家内など、私が教えるまでニュースそのものを知らなかったぐらい。
もういいかげん、ネットでの片言隻語だけで脊髄反射的に感情を爆発させて、罵詈雑言を吐くのは止めた方がいい。特にフィリピンに住んでいる日本人は、こんなデリケートな問題に対して発言するのなら、もっと冷静に考えてからにするべきだと思いますけどね。
ラベル:
難儀な日本人
場所:
フィリピン マニラ市
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