2018年1月22日月曜日

OFWの受難


OFWとは、Overseas Filipino Workers 海外で働き本国に仕送りをするフィリピン人のこと。つまり出稼ぎ労働者。国家予算に匹敵する額の外貨を稼ぐOFW。フィリピンで国家の英雄と言えば、ボクシングの世界チャンピオンやミスコンの優勝者よりも、OFWにこそふさわしい称号。クリスマス前には、マニラ国際空港の到着ロビーにて生バンドが音楽を奏でる中、歴代大統領が一時帰国するOFWを出迎えるのが、恒例行事となって久しい。

私も移住前に、年末の家内の里帰りに付き合った際に、アロヨ大統領のお出迎えに遭遇しました。当時は家内も、日本国内での幼児向けの英語教師の仕事で、月30万円程度のサラリーがありました。その貯金でフィリピンの父親に車を買ったりしていたので、出迎えを受ける資格は十分あったと思います。

そんな良い話ばかりではないのが、OFWの現実。一口にOFWと言っても、家内の高校の先輩のように、ドバイで大企業の管理職をしていたり、アメリカなどで医者や弁護士として活躍したりする人もいる傍ら、多くは家政婦や建設現場の肉体労働などの仕事に就いている。

中でも中近東で家政婦として働くフィリピン女性が、パスポートを取り上げられた上、賃金不払いで働かされたり、性的虐待を受けたりという悲しいニュースは、テレビやネットでよく見聞きします。そして遂に今月(2018年1月)、クウェートでのOFWの虐待被害が絶えないとして、フィリピン労働省が、同国への渡航禁止の措置に踏み切りました。

家政婦への虐待は、フィリピン国内でも時々ある話。やはり密室状態での就労なので、どうしてもそういうリスクはあるようです。ただ海外と違って、よほどひどい監禁状態でもない限り、大抵は逃げようと思えば逃げられる。我が家のメイドさんも、以前働いていた家で、家事も育児も丸投げで早朝から深夜までの重労働に加えて、子供がひどく乱暴で、メイドさんが泣き出すまで叩くという状況。その上賃金不払いが続いたので、そこを辞めて我が家へ来たという次第。

そんなひどい出来事は、日本とは無関係な遠い外国のことと思うなかれ。技能実習生の名目で東南アジア各地から来日した人たちの中にも、信じられないような劣悪な環境で、労働を強いられているケースもあるようです。

日経新聞の記事によると、2014年には岐阜県の鋳造会社で働いていた、27歳のフィリピン人、ジョーイ・トクナンさんが、約100時間の残業を3ヶ月続けた挙句、心疾患で死亡。これはフィリピンでも報じられました。過労死 Karo Shi などという言葉をフィリピンのニュースで聞くことになるとは、まったく情けない限り。

そして、東京新聞の本日(1月22日)付けの記事では、職場の暴力に耐えかねた25歳のフィリピン人技能実習生が、労働組合に加入。これだけでも常軌を逸しているのに、実習生受け入れ窓口で、本来実習生を守るべき立場のはずの監理団体「AHM共同組合」が、この労組に実習生の脱退を求めていたことが発覚。傷害事件というだけではなく、日本国憲法で定められた労働基本権すら無視した行為。

そもそも「実習生」などと綺麗事でごまかすような、「貧乏な国の連中を、お情けで働かせてやっている」という、歪んだ優越感丸出しのやり方は即刻見直すべき。実際に人手不足で困っているのに、どうして正式に労働力として招聘しないのか、理解に苦しむ。

考えてみれば、長く続くデフレの影響で、日本の賃金は世界的に見ても、決して高いレベルではなくなっている。働く側にしても、日本語習得という高い障壁を克服するほどの、時間と労力に見合うものかどうか、そろそろ気づくでしょう。

特に技能実習生ならば、単純労働しかできない人材ではないはず。英語が通じる他の国の方が、よほど働きやすい。こんな不当な扱いをしていれば、クウェート同様、いずれフィリピン政府から労働者の渡航禁止を言い渡されてしまいますよ。


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