2018年1月9日火曜日
フィリピンで考える食の安全
食の安全という観点からすると、フィリピン暮らしは少々分が悪いようです。日本を始め多くの国では、市販されている食品に、原産地や材料、成分などの表示があるのが常識。ところがこの国では、原産地表示がなかったりするものも多い。
そもそも表記があったところで、その真偽を確かめる方法もない。移住して5年以上も経つと、それほど頻繁に新しい食材にも手を出さないし、あまり気にしなくなりました。食の安全に、すごくこだわる人からすると、信じられないと言われそう。
我が家では、米や野菜、卵や魚は、地元の公設市場で買っています。これだと何となく安全なイメージ。しかし、米には小石が混ざっているし、茄子やキャベツなど虫食いがかなり多い。ジャガイモ、にんじんは土で汚れたまま。買ってすぐ洗わないと、たちまち傷んでしまう。家内など、卵まで洗剤とスポンジでごしごし。本当に養鶏場から直接運びましたと言わんばかりに、血やら糞やらですごいことになっている。
これらにしたところで、本当の有機栽培ではないだろうし、ネグロス島の土壌や河川の水は、長年のサトウキビ栽培で使われた化学肥料のために、相当なダメージを受けているらしい。まぁ虫がいるということは、農薬だけは使ってなさそうです。
つまり、あからさまにヤバそうな食材には手出ししないけれど、そんなに神経質になっても仕方がない、というのが、私の食の安全に対する基本姿勢、のようなもの。
ところが、自分もフィリピンに住んでいながら、中国製の加工食品を買ったというだけで、わざわざ指摘する人がいるんですよ。フィリピンで中国製とは完全に無縁な食生活を送るのは、まず不可能なのに。
中には、原産地表示の有無と関係なく、商品名の表示が間違った日本語だから、中国製だ、農薬まみれの偽物だと決めつけて、購入者を小馬鹿にする人もいたり。でも最近のフィリピンでは、日本語を使うのが一種の流行で、対象はフィリピンの消費者。少し表記が間違ったところで、誰も気付かないし、品質とは別問題なんですけどね。
さらにタチが悪いのは、それを食べさせられる子供が可哀想だと言う輩。だいたい昔から、子供をダシに使うのは、詐欺師の常套手段。得体の知れない拝み屋が、あなたは大丈夫でも子供に霊障がある、などと不安を煽る手口。この場合、言ってる本人は、脅すつもりはないんでしょう。だからと言って、確証もないのに、相手の気持ちを逆撫でするのはやり過ぎ。
以前、糸井重里さんが、センセーショナルで感情的に怒鳴るような話しぶりより、冷静に理詰めでやさしく語る方を信じる、というような意味の文章を書かれていました。私はこの意見に心から同意します。本当に危険な食品の警告ならば、被害の実情や、なぜ危険なのかを分かりやすく説くのが筋。間違っても、子供の健康を人質に取るような言い方、書き方をするべきではない。
典型的だと思うのは、味の素が体に悪いとする、ネットでの反応。私は子供の頃から当たり前のように、味の素を使って母が調理したものを食べてきたし、何の問題もなく、今も使っています。81歳になる両親は、それが原因と思われるような病気を患うことなく元気。(フィリピンでも味の素は一般的な調味料)
調べてみたら、引用元が明らかな記事では、昔は疑念があったものの、現在では健康被害を及ぼすような事実は、認められないという記述がほとんど。どうやら発端は、1960年代にアメリカで発生した「中華料理店症候群」に遡るようです。ところが、その後の調査では、味の素の主成分である、グルタミン酸ナトリウムとの因果関係は否定されています。
いまだに味の素=毒物説を叫ぶ記事は、味の素は犯罪会社だとか、100%神経毒だとか、ドギツイ言葉と断定口調のオンパレード。やたら「!」を使う。そしてその根拠が、どれも曖昧なものばかり。信じたい人は、お好きなように、としか言えません。
最近私が聞いた話では、原発事故による放射能汚染を恐れて、フィリピンに移住したという人がいました。そして移住しただけでは安心できず、世界の海はつながっているから、フィリピン近海の魚ですらもう食べられないと、海産物は一切口にしないと言います。食の安全を求めるなら、敢えてフィリピンを選ぶのはどうかと思うし、黒潮にしても対馬海流にしても、フィリピン方面から日本へ流れているんですけど。
中国製だ、放射能だ、米も調味料も精製した塩も砂糖も、何もかも全部ダメだと言いだしたら、食べるものが制限されすぎて、食費は恐ろしく高くつき、栄養失調になってしまいそうです。さらに他人にまで、自分の意見を押し付けられては、堪ったものではありません。
そういうことに神経過敏になるよりも、バランスの良い食事を摂って暴飲暴食を避け、ストレスを溜めずに、適度な運動と規則正しい生活。昔から言われていることを、当たり前にやった方が、ずっと健康で長生きできるように思いますよ。
ラベル:
食生活
場所:
フィリピン シライ市
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