出典:pictkan
フィリピン人と付き合っていると、カニの心理(Crab Mentality)という言葉を時々聞きます。ネットで調べてみると、フィリピンだけで通じる言い回しではなく、英語圏全般で使われているらしい。
これは、カニを捕まえてバケツなどに入れておくと、1匹だけなら簡単に逃げ出せる。ところが、ぎゅうぎゅう詰めにすると、それぞれが我先に出ようと足の引っ張り合いをして、結局1匹も逃げられないという意味。
つまり、隣近所や職場で、誰か一人だけがお金持ちになったり、給料が上がったりすると、全員が妬んで抜け駆けを許さない。家内に訊いてみると、独身時代、大学の研究員だった頃に、多少はそんなことがあったと言います。
家内の出身校フィリピン大学は、頭脳的エリートが集まる場所。言ってみれば、自分の親戚や生まれ育ったバランガイ(町内会)から、とっくに脱出に成功した「選ばれたカニ」みたいな人たちの集団。それでも、そうなってしまう場合があるんですね。
フィリピンの貧困問題を語る場合、その原因の一つとされるカニの心理。フィリピン人従業員を雇用する日本人経営者の方々が、これには悩まされると聞きます。本当に真面目で優秀だから、昇格させてサラリーアップ。明らかに売り上げに貢献していたり、顧客からの評判がいいとしても、同僚からは、ボスの贔屓だ、不公平だと声が上がる。結局、その人は職場で除け者扱いされて、勤め先を辞めてしまったり。
これは私が直接経験したことではないし、少なくとも私の知る家内の親戚や友達では、そんな話は皆無。でも、おそらくそれはたまたま幸運だっただけのことで、フィリピン社会全体を見れば、決して珍しいことではないんでしょう。
ただ、これがフィリピン人特有の心理かと言えば、そうとも思いません。例えば日本の学校。成績優秀で勉強ができる子供は、今も昔もなぜか肩身が狭い。「出る杭は打たれる」なんてことわざが使われるぐらいだし、普通にしていても「テストの点がよかったからって、生意気なこと言いやがって」という目で見られる。下手すると、それが原因でイジメの標的にされたり。「優等生」という言い方が、必ずしも褒め言葉じゃないですからね。
フィリピンほど分かりやすくはないだけで、大人になってからも結構ありました。昔いた職場でもあったし、意外かも知れませんが、カトリックの信徒同士でも感じたことがあります。特に専門技能の集団だと、評価に対する嫉妬心は尋常ではないレベル。
広告の世界では、超リッチなイメージや美男美女ばかりの出演者といった、見るからにファンタジーならば単純に憧れで済む。ところが、現実に手が届くよりちょっと広い家だったり、ちょっと男前のボーイフレンドや、ちょっときれいな奥さん、みたいなCMを作ると、お客さんの反発を食らうんだそうです。
それも、はっきり「嫌い」とは言わず「リアリティがない」などの、あたかも客観的な批評のふりをするので始末が悪い。
カニの心理を持ち出して、フィリピンの貧困は、フィリピン人のメンタリティが諸悪の根源のように言う人もいますが、日本の教育現場や職場に蔓延するイジメの原因も、よく考えたら深いところでは、同じ根っこなのかも知れませんよ。
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