2018年3月4日日曜日

半年経ったらサヨナラ


年々景気は上向きで、インフレが進むフィリピン。5年前の移住以来、ここネグロスでも、ジワジワと物の値段が上がっています。たまに家族で州都バコロドのショッピングモールに行ったりすると、さほど大きな買い物でなくても、2〜3万円ぐらいは使ってしまう。おかげさまで一昨年、フィリピン人の家内が就職したので、まだ余裕はありますが、中流以下のフィリピン人家庭は、ずいぶん生活が苦しいのではと推察。

物価が上がっているのに、人件費の伸びが全然追いつかない。これにはいくつかの理由があって、その中でも一番深刻なのが、ENDO問題。ENDOとは、End of contract 「契約終了」のこと。フィリピンの法律では、雇用後6ヶ月以上経過した労働者を正社員に登用して、有給休暇、年金(SSS)・健康保険(Hilhealth)への登録といった福利厚生や、クリスマス時の1ヶ月分追加のボーナス支払いなどを、雇用主に義務付けています。

この法律を悪用して、6ヶ月になる寸前に一方的に雇用契約を終わらせ、別の労働者雇用を繰り返しすことによる人件費カットが、恒常的に行なわれているのがフィリピン。国民の生活水準が上がらず、貧困層もなくならないのは、このENDOが原因だと、ずいぶん以前から、国内の人権団体などが政府に是正を要求。

実はドゥテルテ大統領も、選挙時の公約でENDO撤廃を掲げていました。他の分野では、暴力的な手法を使ってでも改革を進めるドゥテルテさんが、なぜかこの件に関してはいつもの冴えが見えません。

先月(2018年2月)、インクワィアラーの記事によると、約束はしたけどもうちょっと時間が欲しい。慌ててやると海外の投資家が逃げてしまうとのこと。マスコミからの賄賂要求をはねつけて、新聞やテレビの報道機関を全部敵に回しているドゥテルテさんなので、この記事がどこまで正確か、私には判断できません。その一方でまにら新聞の記事では、労働雇用省が日系企業に対して、5000人近い労働者の正規雇用を求めたという報道もあります。

確かに、外資系企業がフィリピンに進出するのは、人件費の安さがあるから。観光と出稼ぎ以外、外貨を獲得できる産業があまりないフィリピンでは、そこに敏感になるのも分からないでもありません。

しかし私が思うに、ENDOの弊害は、単に労働者の金銭的な利益が失われるだけでなく、熟練を阻むのが一番の問題。近所のスーパーなどでも、レジの係は常に人が変わって新人状態。ちょっとしたトラブルを自分で解決できず、担当の上役が助けにくるまで、ただ待っている。売り場はそんなに混雑していないのに、レジだけが長蛇の列。

そりゃ半年すればクビになると分かっていたら、真面目に仕事を覚える気にもならず、給料以上の働きなんて、アホらしくてやってられないでしょうね。

ENDOさえなくなれば、すべてが解決するような単純な話ではなく、日本みたいに病的なほどお客さんを甘やかせる必要はない。それでも一般にフィリピン労働者の質が悪すぎるのは、ENDOが元凶の一つなのは間違いないでしょう。

頑張れば報いられるという、当たり前のルールを実現しないと、フィリピン経済の出稼ぎ頼りの体質改善は望めない気がします。


0 件のコメント:

コメントを投稿