2018年3月16日金曜日

読めない人々


少し前に、慄然とするような記事を読みました。
国立情報学研究所という研究機関の中にある、社会共有知センター(何やらたいへん難しそう)。そこで、AI(人工知能)の研究に従事している人へのインタビュー。ロボットに高校生が受ける模擬試験を受けさせて、東京大学に入学できるかどうか、という実験をしていたそうです。

5科目8教科の中で一番成績が悪かったのが国語で、200点満点で96点。ロボットにはまだまだ東大への道は遠い。と思ったら、ロボットより得点の低い高校生が相当数いた。今の高校生の読解力には、ひょっとして何か問題があるのでは、と疑問になり、ロボットのことよりも、そちらを調べてみたところ...。

まだ予備調査の段階ながら、公立中学生340人を対象にした試験の結果、驚くべきことに、約5割が、教科書の内容を読み取れておらず、約2割は、基礎的な読解もできていない、ということが明らかになりました。例えばこんな問題。
仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。 
オセアニアに広がっているのは(  )である。 
句読点の打ち方が下手で、あまり読み易い文章ではないにしても、正しく「キリスト教」と答えた生徒が、たったの53%。専門用語も使っていないし、二重否定のようなトリッキーなこともしてない。ゆっくり読めば間違いようがないと思うんですけど。

詳しくはこの記事を読んでいただくとして、日本の教育現場では、冗談では済まないようなことが起こっているらしい。そこで思い当たったのが、このブログへのコメント。中学生や高校生どころか、私と同年代の大人ですら、一体どう読めば、そんなコメントが書けるんだ? という人がたまにいます。

全体の文脈を無視して1文だけを切り取り、それが気に入らないとブチ切れる人。フィリピンのことしか書いてないのに、なぜか「だから中国人・韓国人は民度が低い」と、何でもかんでも嫌中・嫌韓に持っていく人。極め付けは、自分がたまたま出会ったフィリピン人の言動だけで、フィリピン全部を悪くいうな、と書いているのに、「フィリピン人は全部バカ」と返す人。

これって、悪意をもってわざと嫌がらせを書いているのかと思ったら、本当に文章の意味が読み取れていない人が、混ざっていたのかも知れません。

それにしても、母国語の読解力があまりに低いと、国語以外の教科にも深刻な影響がでるでしょうし、どんな職業についても、困ることがいっぱい。もし自分の部下が、満足に日本語を読めないと分かったら、恐ろしくて仕事を任せられない。

以前、フィリピンでは、理科や算数などの教科書が英語で書かれているので、英語の読解力がないと理数系が全滅状態になる、と書きました。フィリピンのような2重・3重言語社会ではなく、外国語以外どんな分野でも、ほぼ完全に日本語だけで教育を受けられる日本。ところが、フィリピンと同じ問題が、現実に日本でも起こっているということなんですよ。これはヤバいなぁ。


1 件のコメント:

  1. これは日本では昔から(1985年あたりから)言われています。
    高校生の七割が勉強を理解できない、中学生の五割が勉強を理解できない、小学生の三割が勉強を理解できない、という所謂「七五三問題」です。
    私としては、中学校の勉強の五割を理解できないのに、よくも高校へ進学できたものだと思います。
    私は20年前に学習塾で中学生と高校生に指導をしていましたが、「なぜ、この程度のことを知らないんだ!?」と思う基礎学力が低い子がかなりいました。(だから塾に来ていると言われたらそれまでですが。)
    当時、私も塾講師の端くれなので、原因を究明すべく、教え子を被験者にして色々と調査や考察をしました。
    そして、二つの調査結果が出ました。
    (1)基礎学力が低い子は、親との会話が少ない。
    (2)基礎学力が低い子は、親が新聞や本といった活字を読むことが少ない。

    「ねーねー、おかあさん、きょうね、ほいくえんでね、○○ちゃんがね…」と、小さい頃から身の回りの出来事を親に説明していた子は、幼い頃から論理的思考の訓練をしています。
    なので、このアドバンテージが中学生になって如実に表れます。
    作文を書く、現代文の読解、数学の文章問題を解く、自己の主張はもとより相手がことを慮ることが上手です。

    家庭学習をする習慣がある子、家庭学習をすることに抵抗がない子、そういう子の親は総じて毎日、新聞を読んだり、本を読んだりしています。
    そうして新聞記事について親子で会話をしたり、考えを言葉にするという訓練を日常生活の中でしています。
    親が本を読んでいる姿を見て、子はそれを真似します。
    その本を読む親の姿が、子の心理に「親は真剣に読んでいる。」「親は面白そうに読んでいる。」と映り、子は自然と机に向かう訳です。

    親子で会話がなく、親が漫画を読んだり、ゲームに興じているという家庭の子は、基礎学力が低いというところに繋がりました。

    現代の日本はスマートフォンが小中学生にも普及していますので、私が塾講師だった頃とはまた違う傾向があるかもしれません。

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