長い長い選挙戦が一昨日で終わり、昨日の日曜日は、大音量の音楽を流す選挙カーから、ようやく解放されました。相変わらず、向かいの家が工事を継続中なので、まったく静かになってないんですけど、まぁ、多少はマシになったと言うことで。
その空白の24時間を経て、本日5月12日(2025年)は、3年に一度のフィリピン総選挙の投票日。今回は中間選挙なので大統領選はなく、中央や地方の各議会議員や首長の改選が行われます。
現在中央は、波乱の政局真っ最中。ボンボン・マルコス大統領と大喧嘩中の副大統領サラ・ドゥテルテ。その政治生命が、上院の議席をどっちの陣営が過半数取るかで左右される一大決戦。もしサラ側が負ければ、上院によって決定される弾劾によって、副大統領職を追われるだけでなく、3年後の大統領選にも立候補できなくなります。
サラの方が、金に清潔イメージがあって、犯罪や麻薬に対して毅然とした対応ができそうなので、一般のフィリピン国民の支持率が高い。やっぱり、フィリピの憲政史上最大と呼べる大改革を成し遂げた、父ロドリゴ・ドゥテルテの再来を待ち望む人が多いんでしょうね。(その副作用も甚大でしたが)
とは言うものの、ここフィリピンでは一介の居候外国人に過ぎない私。選挙権はないし、今後帰化しようとも思わないので、国全体の政治の行方には関心はあっても、それほど真剣に考えてるわけではありません。
ところが市政となると、地方在住者への影響が大きい。市長の個性で良くも悪くもいろいろ変わるんですよ。良い方向だと、近所の土剥き出しだった道路が舗装されたり、州都バコロドの学校へ通う、シライ市民向けの無料送迎バスのサービスが新設されたり。日本でも最近は、兵庫県明石市の泉房穂前市長や、福岡市の高島宗一郎市長のように、はっきり分かる改革をする人が出てきましたのは、良い兆し。ちなみ、例として上げた件は、現シライ市長のガレゴさんの功績。
そのガレゴ市長と、対立候補のゴレツ前市長の一騎打ちで迎えた市長選の朝、なんと選挙絡みの殺人事件が起こってしまいました。
このガレゴ市長、フィリピンでは非常に珍しい貧困層出身の政治家で、前回の選挙では、買票に頼らず僅差でゴレツ氏を破って初当選。当初は有力支持者(要するに地主などの富裕層)の顔色伺いの朝令暮改連発で、市政の行く末が案じられましたが、最近はかなり安定してきて、貧困層向けの政策が支持されているようです。
ところが、同じ西ネグロス州のバコロド市長やその他の有力市長が結託した「金持ち市長連合」みたいな連中とは、はっきりと距離を置いたため、銀行からの融資停止という、明らかな嫌がらせを受けて、新市庁舎建設工事がストップしたり。
さすがにシライの有権者も馬鹿じゃないらしく、どっちが市民の方を向いて政治してるかは、理解している。選挙活動も清潔路線のガレゴ市長が優勢に展開。焦ったゴレツ陣営か、あるいは背後にいると噂される影のキングメーカーからの指示なのか、まだ分かりませんが、投票日当日の今朝早く、ガレゴ市長のボランティア選挙運動員2名が射殺されました。
速報でフェイスブックに投稿された、地元マスコミの記事によると、買票阻止のために、ゴレツ氏の選挙事務所前で監視活動をしていた、ガレゴ側のスタッフ数人が、乗りつけたバンからの発砲で死傷。なんと、まだ救急車も来ていないタイミングで、大量に出血して路上に倒れている被害者を写した動画まで公開されてました。
警察によって封鎖された事件現場 出典:Bombo Radyo Bacolod |
すでに明るくなってからで、目撃者も多かったらしく、数時間で犯人は逮捕。驚くべきことに、同じシライ市内のバランガイ・キャプテン(町内会長)の犯行だったそうです。
それにしても、仮にゴレツ側が仕掛けたとしても、なぜこんな、どう考えても得票を有利にできるとは思えないやり方をしたんでしょう。しかもすぐに足がついちゃう杜撰この上ない始末。すごく穿った見方をして、ガレゴ市長の自作自演と考えてみても、選挙戦で有利だったガレゴさんには、まったくメリットがありません。
ところで、私にとってこの事件が生々しいのが、現場の選挙事務所が、家内の実家のすぐ近く。私も何度も前を通ったことがある、よく知っている道路。何なら、自宅から歩いて行ける距離。さらに我が家のメイドさんや、その妹の私の家庭教師が、ゴレツ側の監視員として、投票所に詰めています。もちろん午後からは、家内と息子も投票へ行きました。
ということで、ドゥテルテ前大統領の治世では、マニラ首都圏を始め治安が良化したと言われるフィリピン。ところが現大統領になってからは、主に日本人を狙った悪質な拳銃強盗が多発したりしてるし、地方でも、今回の事件は、まるで1960〜70年代のマルコス時代に戻ったような犯罪。毎回、選挙翌日は、その結果をめぐって騒動になるのが常ですが、今回は、それを上回る大騒ぎが起こるかもしれません。