これまで3回に渡って投稿してきた、両親のお試し介護移住シリーズ。今回は最終回です。
いろいろあった15日間のフィリピン・ネグロス島滞在ですが、通しで見ると、まぁ上出来だったと思います。暑さには少々文句も出ましたが、父母のために用意したゲストハウスは、居心地が良さそうだし、食事も特に問題なし。毎日、お気に入りの嫁や孫と話ができて、若干の認知症気味の母も、明らかに表情が豊かになり、笑顔が増えました。これは私の感覚だけでなく、日本から付き添ってきた弟もそう思ったようです。
滞在中、たまたま家内の誕生日が重なり、例によって親戚を招いてのホーム・パーティ。ある程度の予想はしてたものの、家内の父、弟とその家族、叔母、従弟、誰もが母を見る目の実に優しいこと。特に比較的年齢の近い、70代の叔母には、数年前に夫を亡くしているせいか、母の食事の介助をする父の姿が、何とも微笑ましく見えたらしい。
ちなみに、一日だけ州都バコロドに出掛けて、外食やショッピングをした際に使った車椅子は、従弟のパウロが手配してくれました。彼は本職の看護師なので、そういう分野でも頼りになります。また、レストランやショッピングモールでも、店員の対応がとても手厚い。やっぱりフィリピンの良さは、なまじっかのお金を持っていたり、若くて元気な時より、他人の助けが必要になってから、実感しますね。
そんなこんなで、帰りの飛行機も遅延や欠航もなく、往時と同じく家内が同行して無事帰国。その家内も、数日の日本観光を楽しんで、12月の始めにネグロスへ戻ってきました。心配していたマニラでの乗り換えもスムーズだったとのこと。
さて、80代になってからの海外移住。一般論としては、もちろん誰にでも勧められるわけではありません。まず、飛行機に乗ることすらできないほど認知症が進んでいたり、完全に寝た切りになってからは、まず無理でしょう。そして、本人たちがそれを望まないことには、何も始まりません。
事の経緯をまったく知らない人からすれば「そんな高齢の日本人が海外移住なんて不可能」と決めつけそうです。実際、この話を日本でしたら、大抵の人はそういう反応。それどころか、高齢者ではない普通の海外移住でも、足下に「不可能」と断じてしまう人が多いのも事実。私も40代の頃に、散々言われたものです。かつての上司など「出来もせんことを吹聴するな」と怒り出したほど。
しかしながら、少なくとも飛行機に乗るぐらいの体力が残っていれば、いくつかの条件をクリアすることで、日本よりも快適な余生を送れそうというのが、今回のお試しを通じての私の感想。
快適な住まい、食事、介護する側との良好な人間関係さえなんとかなれば、寒い冬がなく、社会全体として高齢者に優しいフィリピンは、老後を過ごすには悪くない場所。もちろん経済的な裏付けは重要ですが、現在70〜80代で、それなりの年金を貰ってる世代なら、少なくとも物価の安いネグロス島なら大丈夫。
唯一のリスクは、容態が急変したような場合。残念ながら、生死にかかわるような状況だと、日本には比ぶべくもないフィリピンの医療レベル。両親の場合は、もう十分に生きたから、延命治療など不要と明言しているので、その点は「これも寿命」と割り切れます。そもそも、お金がかかりすぎて、植物状態で生かし続けるなんでできないでしょう。
というわけで、まだ詳細な時期は未定ながら、おそらく来年2024年には、両親の本格移住という運びになりそうです。